没落令嬢の奴隷生活 第2話 恥辱

 男は手近な部屋の扉を開け、私を引っ張り込んだ。
 背後からは、別の男と侍女の言い争う声が聞こえてきたが、扉が閉められると、くぐもった音に変わってしまい、何を言っているのか分からなくなった。

 部屋の中には他に誰も居なかった。男とふたりきりだ。
「わ、私は、コーデリア・ノース。ノース侯爵家の娘よ……。身代金の支払いには応じるから、せ、誠意を持った扱いを要求するわ……」
 精一杯の虚勢を張ったつもりだったが、声の震えは抑えられなかった。 11.png
 男は鼻で笑い、私をベッドに放り投げると、服を脱ぎ始めた。
 私はそれをただ見ていることしかできなかった。
 ついさっきまで自らの境遇を憂いながら物思いに耽っていたのに、この状況は何なのだろう?
 目の前で起きていることが信じられなかった。
 これから下賎な海賊に身体を汚されるというのだろうか?
 ノース侯爵家の娘である私が?
 本当に?

 男の身体は大きかった。
 筋肉が盛り上がっており、体毛が濃い。さらには獣のような体臭を放っている。
 なにもかもが私の嫌悪感を誘う。

 全裸の男がベッドに上がろうと片足を掛けた時、股間で揺れ動く物が目に入った。
 私の手首くらいの太さがありそうなそれは、まるでそこだけが別の生き物のように見えた。
 
「さーてと」
 男は初めて口を開いた。
 楽しそうな声だ。これから食事でもするかのように弾んでいる。
 表情からも、上機嫌であることが分かった。

 押し倒され、男に のし掛かられた私は、震えながら言った。
「離しなさい……み、身代金なら、ちゃんと……」
 悪足掻きは途中で止められた。唇を奪われたのだ。

 気持ち悪かった。
 恐怖も屈辱も、吐き気に比べればなんてことはなかった。
 男の唇の半端な柔らかさが気持ち悪かった。
 割り入る舌のぬめり具合が気持ち悪かった。
 口内を這い回る舌の動きが気持ち悪かった。
 肌で感じる筋肉の硬さと、男臭い体臭が、さらに私を不快にする。

 たっぷりと時間を掛けてから男は口を離した。
 私の唇からは涎が垂れていた。男の唾液も含まれているのだと思うと、とてもではないが飲み込む気になれない。

 次に男はスカートの中に腕を突っ込んできた。
「や、やめなさいっ」
 男の胸板を押そうとしたが、全く動かなかった。
 仰向けだから力が出ないとか、そういう問題ではない。体格差が有り過ぎるのだ。上に乗られている限りどうしようもない。

 些細な抵抗は何の役にも立たず、あっという間に下着を引きずり下ろされてしまった。
 どうも私の衣服を破く気はないようだったが、しかしそんなこと、何の慰めにもならない。
 太ももに感じる男の手は大きくて太い。こんなものに身体を好き勝手されてはたまらない。
 ましてや、さっき目にした陰茎に貫かれるだなんて、想像したくもない。

 男の指は、太ももを滑りながら股間に迫った。
 触れられたのは予想外の場所だった。
 お尻の下に潜り込んできた指が、肛門をくすぐるように撫でてきたのである。

 硬直する私を間近から見下ろしながら男は言った。
「こっちに入れてやるよ」
「…………!」
 私はただ男の顔を見ていた。

「う……」
 お尻の穴に指の先端が入っただけで、思わず呻いてしまう。

 男は無遠慮に指を押し進めた。
 その動きが止まったのは、根元まで埋まってからだった。

「痛くはないだろ?」
「…………」
 男の言葉を私は無視した。というより、答える余裕がなかった。
 排泄器官を他人の指で貫かれる恥辱で頭がどうにかなりそうだ。

 私は何度も肛門を締め付けた。
 わざとそうしているわけではない。指を意識しているせいか、お尻の穴が勝手にヒクついてしまうのだ。

「ケツ穴が食い付いてきてるな。ま、そう恥ずかしがるな。どの女もこうなればケツをキュウキュウさせるからな。侯爵家だかなんだか知らねえが、お前も結局ただの女だってことだ。ケツを貫かれれば、平民の女と同じように、指を食い締めるしかねえんだよ」
 どうやらこの男は、何人もの女性の肛門を犯してきたらしい。
 私もそれらの女性と同じ扱いを受けているのかと思うと悔しかった。

 もっと悔しいのは、私が他の女性と同じ反応をしてしまっていることだが、どう頑張っても肛門のヒクつきは止められそうになかった。
 男の指は止まったままだというのに、私は、何かを催促するかのように繰り返し肛門を締めてしまう。
 反応しないように集中すればするほど余計に指を食い締めることになる。
 自分の身体なのに思い通りにならず、悔し涙で視界がぼやけてきた。

 男は少しずつ指を引き抜いていった。

 痛かったわけではないが、違和感は強烈だった。
 とはいえ、今までにない感触というわけではなかった。排泄のたびに味わう慣れた感覚ではあった。
 それが男の指によって もたらされているという事実が違和感に繋がっているに過ぎない。

 指が抜け出ていく途中で私は慌てて肛門を窄めた。
 今度は無意識の収縮なんかじゃない。排泄の時と同じような感覚に襲われた私は、粗相をしたのではないかと思い、自らの意思で窄めたのだ。

 男は、この反応もまた予想通りと言わんばかりに得意げな顔をした。嘲笑と言えそうな笑みを浮かべさえした。
 彼が犯してきた女性たちも皆、指を抜かれた時に、排泄の予感に怯えてお尻の穴を引き締めたのだろう……。

 不意に、男の指が私の口元に寄せられた。
 肛門を弄くっていたのとは別の手だと最初は思ったが、排泄物の臭いが鼻を突き、そうではないことが分かった。
「舐めて濡らせ。痛いのは嫌だろ?」
 指を口に押し付けられ、私は唇をきつく閉じた。
 しかし男は力尽くで口内に指を突っ込んできた。

 男の指は私の舌を掴み、軽く引っ張ったり撫で回したりした。
 その最中には特に味はしなかったように思うが、不思議なことに、男が手を離した後になってから舌に苦みが走った。

 私が咳き込んでいる間に男は再びお尻の穴に触れてきた。
 唾液を塗り込めているのか、肛門の皺を伸ばそうとするかのように何度も指を肛門表面に滑らせてくる。

 やがて指が離れると今度は違う物がお尻に当たった。
 指よりも太く柔らかい物。けれど芯は硬そうな物。
 それが何なのかを察した時、私は今更ながらに藻掻いた。

 男は舌打ちした後、私の首に手を掛けた。
 大きな手で締め上げられると、すぐにでも死んでしまいそうな気がした。
 首を絞められる苦しさよりも、殺されるかもしれないという恐怖感に身が竦んだ。
 抵抗をやめると男の手が離れた。
 もうそれ以上の抵抗をする気にはなれなかった。
 肛門を大きく押し開かれ、深々と侵入を許しても、私は黙って震えているだけだった。

 指の時と同じように、痛みは ほとんど無かった。本当に挿入されているのか分からなくなるくらいだ。
 お尻の穴が無意識に収縮する時だけ、異物を咥え込んでいることを実感できた。

 男は上半身を深く倒した。それに伴い、私の両足が男の腕に押されて高く上がった。足の裏が天井を向く。
 顔同士が近付き、お互いの息が吹き掛かった。
 その状態で男は腰を上下に動かし始めた。

 肛門を犯されているのだから、抜き差しが行われているはずなのだが、私は、常に排便をしているかのような感覚に襲われた。入ってくる時の感触が無いのだ。
 だから、ともすると本当に排泄をしているのではないかと思えて仕方なかった。

 いくら見知らぬ海賊が相手とはいえ、お漏らしを披露するわけにはいかない。私は何度も意識して肛門を引き締めた。
 それが男を喜ばせることになると分かっていても、やむを得なかった。

 ベッドの軋む音と布の擦れる音だけが部屋を支配していた。
 時折り扉の向こうから甲高い声が聞こえる。扉が閉め切られているせいで あまり聞き取れないが、たぶん、私のように犯されている侍女が泣き叫んでいるのだろう。
 だとすると、大人しく犯されている自分は何なのか。ひどく情けなく思えてきた。
 悲鳴を上げれば暴力を振るわれるのだから、他に選択肢はないのだけれど……。

 すべてが男の思惑通りというわけで、その事実は私にとって屈辱的なはずだが、なぜか悔しい気持ちは薄れていた。
 もう何でも良いから早く終わって欲しい。そう思う。

 男は私の両足をさらに持ち上げ、前へ倒した。
「ぐ……」
 私は呻いた。
 自分の膝が顔の横まで来ていた。身体を二つ折りにされたような窮屈な格好だ。
 結合部が頂点に達して、仰向けの私からも見えそうになった。

 屈辱を与えるためだけにこんなことを……? 一瞬だけそう思ったが、どうやら違うようだった。
 男はこれまで以上に腰の上下動を激しくした。
 上から叩き付けるような腰使いを行うためにこの姿勢を強いてきたのだ。

 私のお尻と男の股間がぶつかり合うたびに、乾いた音が鳴る。
 男は弾むように腰を振っていた。
 反動すら利用したスムーズな動きが、肛門性交に慣れ切っていることを証明している。

 私の息は荒くなっていた。
 全身運動をしている男も熱い息を吐いているが、私もそれと同等以上に呼吸が乱れている。
 男に身体を揺さぶられているだけでも体力を消耗するものらしい。

 あまりに激しい摩擦に耐え切れなくなってきたのか、肛門粘膜が熱を持ち始めた。痛みを感じるようになるのもそう遠くないかもしれない。
 いつになったら男は満足するのかと不安になってきた頃、直腸に熱い感触が広がった。

 最初は何が起きたのか分からなかった。断続的に同じ現象が起き、そのたびに肛門がヒクつくことで、ようやく理解できた。
 射精については知っていた。嫁ぐ身として当然 学んでいる。
 だから、子を作るための儀式を排泄器官で行われた恥辱も、正面から受け入れなくてはならなかった。

 男はゆっくりと腰を引いていき私から離れた。

 自由になったお尻の穴は、少し熱くなったくらいで、特に傷付いているわけではないようだった。
 腸内に精液を注がれたはずだが、体感はできなかった。中で射精されたのは勘違いだったのだろうか、とすら思う。
 でも、肛門から溢れてくる精液の ぬめりが私に現実を突き付けてくる。

 男は衣服を着直して私を振り返った。
 仰向けのまま呆然としていた私は、足を閉じて股間を手で隠した。
 何か言われるかと思ったが、男は無言のまま部屋を出て行った。

 入れ替わりに複数の男が入ってきた。
 私はまたしても肛門を貫かれた。
 次の男も、その次の男も、排泄器官だけを蹂躙した。

 海賊たちの間で決まり事があり、襲撃時に犯して良いのは肛門だけということになっているらしかった。
 処女を奴隷として高値で売り払うためのようだ。
 ただし、必ずしも処女のままにしておくとも限らないらしい。
 その辺りは、状況が落ち着いてからキャプテンが品定めして決めるのだとか。

 上物の女なら、処女であることに価値が出て、より高く売れるようになるが、器量に問題があれば処女性にはあまり意味がない。
 値が変わらないのなら仲間うちで犯してしまう。
 そういうことのようだった。

 カーライル王国の至宝とまで言われた容姿を持つ私は、当然ながら処女を守ることができたけれど、その代わり、お尻で何人も相手をさせられることになった。
 他の女たちに比べて、群がってくる男の数が圧倒的に多く、私の肛門は、擦り切れてしまうのではないかと思うくらいに酷使された。

 私は説得を試みた。奴隷売買よりも身代金の方が儲かることを力説した。
 けれど、まともに取り合ってもらえなかった。

 私が侯爵家の者であることは、海賊たちにとって喜ばしいことではないようだった。
 この襲撃の目的は私の身柄ではなく、海賊船が損傷して沈没寸前の状態にあったところを、私の乗る船が偶然 通り掛かったのだとか。
 海賊たちが旗を隠して助けを求めると、私の船は何の疑いも持たず無防備に近付き、不意を突かれて制圧されてしまった、ということらしい。
 それで戦闘を経ずに海賊の侵入を許したわけだ……。

 私たち捕虜は、新しい船を奪う際の副産物でしかなかったのである。
 長い間 漂流していたらしい彼ら海賊は、すぐにでも遠方の故郷に帰りたがっており、ノース侯爵家と身代金の交渉を長々とやるつもりはないようだった。
 彼らは遙か遠くの国の出身で、略奪を繰り返しながら遠洋航海をしているらしい。
 捕虜は途中の適当な地で売り払ってしまうつもりのようだ。

 散々犯された後、ようやく海賊のキャプテンと対面を果たしたが、彼も、ノース侯爵家と交渉する気はないようだった。
 下っ端とは違い、早く故郷に帰りたいなんて理由ではなく、純粋に損得を考えての結論だったので、説き伏せることはとてもできそうになかった。
 キャプテンは、侯爵家とヘタに接触して軍艦を派遣される事態に陥ることを警戒していたのだ。
 貴族に手を出して武力による逆襲を受ける例は、確かに少なくない。
 実際 私も、無事に帰ることができたなら、この海賊たちに対する報復を父や結婚相手に頼むつもりだし……。

 しかし報復は叶わなかった。
 私たち捕虜は遠い異国に連れ去られてしまった。
 海賊船は沈み、拉致の事実が祖国に伝わることはない。
 船ごと消息不明になったと分かれば、通常は、航海中に座礁したものと見なされる。
 つまり死んだと思われ、当然、捜索もされない。

 とはいえ、まだ希望はある。
 なんと言っても私は侯爵家の令嬢なのだ。恩を売る価値はある。
 奴隷商人か、買い取り先か、誰かひとりでもそこに目を付けてくれれば、すべては解決する。
 どんどん祖国が遠くなっていく状況で、海賊たちに犯される日々を送りながら、私はそう自分に言い聞かせたのだった。
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