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SS・宇宙人襲来

ショートショート・宇宙人襲来

 世界主要都市5ヵ所の上空に突如として出現した全長数キロの巨大宇宙船を見て俺は思った。人類終わったな、と。
 2017年現在、俺ら地球人は未だ月に到達しただけだ。火星にすら人間を送り込めていない。なのに奴ら宇宙人ときたら、地球人が感知すらしていない遙か遠方から到来しやがった。
 科学技術の差は歴然。たった5隻が相手とはいえ、戦って勝てるはずがない。アメリカを中心とする国連代表団は当然ながら交渉を行おうとした。
 しかし、奴ら宇宙人の先制攻撃により、主要各国の空軍は半日で壊滅状態となった。
 先制攻撃と言っても、数日前に小型宇宙船が某国の軍隊に捕獲されており、その返還を求めてのイザコザの末に宇宙船団は攻撃に至ったようで、決して問答無用というわけではなかったらしいが……。
 とにかく、宇宙船の科学力は圧倒的だった。こっちの戦闘機からパイロットだけをピンポイントで消し去る中性子消波だの、空間を断裂して宇宙船を守る次元バリアだの、びっくり兵器のオンパレードだ。それらに対して地球人類は全くの無力としか言いようがなかった。
 国連代表団は、和平への第一歩として、小型宇宙船と乗組員の返還を交渉材料にしようとした。ところが、肝心の某国が「そのような事実は無い」と惚け続けたため話は進まなかった。この期に及んで一体なにを言っているのかと世界中が呆れたが、捕獲されていた宇宙人は全員死亡していたことが後になって判明した。別に拷問死させたわけではなく、現場の不手際による事故らしい。いずれにしろ、宇宙船団との交渉はこれで手詰まりになったのだった。
 ここまで来れば、人類終わったな、と思ったのは俺だけじゃないはずだ。そして、誰もがこう思ったのではないだろうか。映画のように何かの切っ掛けで巻き返せたら良いのに、と。
 夢物語である。宇宙人どもは超科学を有しているのだ。戦略戦術も さぞ洗練されていることだろう。米軍が古代の軍隊に負けるようなもので、そんなことは有り得ない。
 俺はそう思っていたのだが……。
 人類は勝った。
 宇宙船1隻を奇襲で捕獲すると、その宇宙船を使ってさらに別の宇宙船を捕獲し、それを繰り返した末、やがて人類は戦力差を逆転させた。まさに映画のような奇跡的勝利だった。

 いやいやそんな馬鹿な、と俺は思った。戦闘に入った後に奇襲なんて成立し得るだろうか? 超科学による自動警戒装置とかそういうものがあったはず。それに、捕獲した宇宙船を人類がそのまま使えたというのも信じがたい。認証システムは無かったのか? 網膜認証や指紋認証を越えた超厳重なシステムがありそうなもんだ。なぜそれが機能していない? だいたい、1隻目が捕獲された後も同じ手に引っ掛かり続けたというのもどうなんだ。
 こんな有様で、一体どうやって あれだけの超科学を築き上げたのやら。
 まあ、科学力の差が大きすぎて油断してしまった、ということなのかもしれないが。人類同士の戦争でも、「なんで警戒してなかったの?」と言いたくなるような失態はいくらでもあるわけだし。部外者から見れば信じられないような油断も、当事者からするとそれなりの理由があったりする。宇宙人もその類の落とし穴に嵌ってしまったということだろうか。
 釈然としないが、そう解釈するしかなさそうだ。

 主要都市上空の宇宙船がすべて排除されると、人類は新時代を迎えた。捕獲した宇宙船から技術をパクりまくって急速な進歩を遂げたのだ。
 本来なら有り得ない速度で新技術が次々と普及していき、そのたびに新たな消費需要が生まれ、世界中が空前絶後の好景気に沸いた。
 世界的なエネルギー問題や食糧問題は新技術で あっさり解決し、地球規模の気候操作すら実現してしまい、温暖化問題は過去のものとなった。
 宇宙人撃退からの30年間は人類の黄金時代と言えた。
 2047年現在。それでも宇宙船には まだまだ未知の技術が詰まっている。今なお、すべての技術を借用するには程遠い段階だ。これから解析がさらに進めば、人類文明はもっと先のステージへ進めるだろう。
 すでに月と火星に植民を終えて、木星の衛星にまで手を伸ばそうとしている人類の発展は、際限が無いかのようだった。

 しかし終局は突然 訪れた。新たな宇宙人が襲来したのだ。
 火星の植民都市が一瞬で瓦礫の山と化したのを契機に、その翌日、月の植民都市も同様の運命を辿った。いずれも警告は無かった。
 そして数時間後、奴らは地球に到達した。
 前回は主要都市5ヵ所に出現しただけだったが、今回の数は桁違いだ。国連が正式に確認しただけでも、世界322都市の上空に現れている。

 人類がパニックに陥る中、長年の疑問が解けた俺は ひとり納得していた。
 前回の襲来時、なぜ奴らは不用意に宇宙船を乗っ取られたのか。そもそも、戦うことなく人類を屈服させることも可能だったはずなのに、なぜイザコザが発生したのか。超科学を持つほどの高度文明にしては、一連の流れが不自然なほど稚拙だった。
 前回と今回の宇宙船団を比べてみると、その疑問に対する答えは明らかだ。
 人類が必死の思いで撃退した前回の宇宙船5隻は、ただの遭難船だったのだ。輸送船か、漁船か。あるいは客船か。いずれにしろ、中性子消波も次元バリアも護身用の武器に過ぎなかった。だから戦術的には全くお粗末で、宇宙船のセキュリティシステムも潜入工作を想定していなかった。人類はそこに付け込んだ。だから勝てた。

 たとえるなら、昔の貿易船が進路を見失って未開の部族と遭遇したようなものか。
 貿易船の船員が護身用の銃を持っていたとしたら、未開の部族と揉めて戦闘になった場合、まず最初に何人かは殺せるだろう。部族は未知の武器に衝撃を受け、恐れおののく。
 しかし、それでも部族の戦意がゼロにならなかったとしたら、船員は生きて帰れないに違いない。船員は軍人集団ではないため、いくら警戒しているつもりでも隙だらけで、夜襲を受ければ簡単にやられてしまう。
 船員を全滅させた部族は、強力な敵に勝利したことを祝い、死体から文明の道具を手に入れ、その便利さに驚き、積極的に使うようになる。
 一方、貿易船の行方を探していた本国は、時間を掛けて状況を把握すると、対応を検討し始める。
 ……結果、世界322都市の上空に巨大宇宙船が飛来したというわけだ。
 無知蒙昧な地球人類は、今度こそ絶望的な戦いに突入するのである。


宇宙人襲来・あとがき
 山登り中に熊と格闘になり何とか勝利して喜んでいたら、実のところ相手は子熊に過ぎなくて、怒り狂った親熊が出てきちゃいました、みたいな。ですよねー、熊にしては小さいような気はしてたんですよー、今にして思うとそりゃそうだよなって感じっすわー、みたいな。
 ショートショート2作目。以上です。
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